在宅勤務という勤務形態は、用が無ければ家から出ない生活を送れてしまう。そこで、平日の昼食は意図的に外出して調達するようにしている。新型コロナウイルスの流行前は、近場にある飲食店を半ば虱潰しに巡っていた。外食を積極的に行うのが憚られる時期が続いたことや、めぼしい店は大抵通ってしまったこと、費用や時間も馬鹿にならないことから、最近は専ら最寄りのスーパーマーケットで惣菜を調達するようにしている。

しかし、そこで課題になるのが何を選ぶかということである。スーパーマーケットの惣菜は種類がそれなりにあるものの、好みだけで選ぶと自ずと毎日似通ってしまう。栄養の偏りも心配だ。かと言って、基準が無ければ何を食べるかもおぼつかない。

そんな自分にとっての救世主が、燦然と輝く割引シールである。昼食時間は閉店間際ではないので、割引シールが付いていることはあまり多くない。それでも、数日前から並んでいたのに誰の手にも取られず消費期限を待っている哀れな見切り品に付与されていることがある。そして私は、それを見かけたときには積極的に籠に入れるようにしている。

割引なので当然安くなっているのだが、それは一番の理由ではない。幸いにして日々数十円を切り詰める必要が無い程度の生活を送れているし、節約したいだけなら自炊したり別の買い物を控えたりした方が余程効果的だ。

この習慣の最大の利点は、自分が食べようと思っていなかったものに出会うことができることだ。スーパーマーケットも常に同じ商品が値引きされる状況を放置しないため、割引される品は実質的に無作為に近くなる。また、どの商品が割引されているかは実際にスーパーマーケットまで足を運ばなければ分からない。割引シールが与えてくれる新しい食事との偶発的な出会い、セレンディピティと言えよう。

勿論、割引シールは絶対ではない。時には「あれが食べたい」という気持ちになっていることもあるし、割引されていても食べたいと思えないものも有る。そんな時は自分の欲求に素直に従えば良い。割引シールはあくまでも迷った時の最後の一押し。いわば朝のテレビの占いのようなものだ。しかも、普段よりお安い上に、食品廃棄を減らせるのだから、申し分無い。

これからも、割引シールが私の食生活を左右する日々が続きそうだ。