Sidebery による Firefox の垂直タブ

中学生時代から快適なウェブ閲覧環境を求め続けて早云十年。これまで w3m から Brave まで様々なウェブブラウザーを試しては乗り換えてきたが、ここ数年自宅環境は Firefox に落ち着いている。Firefox 57Vimperator を失うという経験から一度は離れてしまったが、レンダリングエンジンの多様性を保つ観点から Gecko には生き延びて欲しいのと、何より健全なインターネットを作るという Mozilla の理念に賛同して、戻ってきた。

一方、前職ではずっと Edge を使っていた。それは勿論自社開発だからというのが一番大きな理由だった。

だが、転職してその事実が無くなった後も、Firefox に切り替えることなく Edge を使い続けていた。理由は 2 つ有る。

一つは、現職での事実上の標準が Chrome だったことだ。ただでさえ経験の無いウェブサービス開発において、レンダリングエンジンの違いによって嵌る罠を増やしたくないと日和ってしまったのだ。Edge もレンダリングエンジンは Chrome と同じ Blink なので、まず問題は起きないだろうと踏んだのである。

それだけなら Chrome を使えば良いが、そこで重要なのがもう一つの理由、垂直タブである。私は 100 個以上開きっぱなしにするほどのタブ愛好家ではないが、それでも調べ物をしてふと気付くと 20 前後のタブが開いていることはしばしば有る。それだけの数のタブから目当てのタブを一目で探すためには、垂直タブが有用である。Edge はこれを標準機能として実装している点が魅力的だった。

ところが、最近一つ目の理由が薄れてきた。ウェブサービス開発に慣れるにつれ、問題に嵌っても何処に原因が有りそうか分かるようになってきた。また、誰しもが Blink を使ったウェブブラウザーを使って開発していると、知らず知らずのうちに Blink の独自仕様に依存した処理を書いてしまう懸念も高まる。仕事でも Firefox を使う機運が高まってきた。

となると問題は二つ目の理由である。ウェブサービス開発では多数のタブの取り回しが一層重要になる。Firefox が標準で垂直タブに対応していないことに対し、歯痒い気持ちでいた。

もっとも、拡張機能でサイドバーを活用すれば垂直タブに近いものを実現できることは知っていた。現に、数年前にそのような拡張機能を試したことがある。そのときは、今一つ使用感に納得できずに止めてしまった。その理由をはっきりとは覚えていないが、他の標準 UI と比べて、どうも取って付けたような操作感が有って気に入らなかった記憶が有る。

しかし、これまで愛用し続けてきた垂直タブへの思いは捨て切れず、ついに思い立って Sidebery を試すことにした。検索した限り、垂直タブを実現する Firefox アドオンの中で唯一「おすすめ」表記の有るものだったからだ。

そして、それは正解だった。ちょっと手間を掛けて標準のタブバーとサイドバータイトルを隠してやれば、私が欲しいと思っていた垂直タブそのものが手に入った。今回はどういう訳かすぐにしっくり来る操作感を実現することができた。年月を経て、私自身が垂直タブの操作に慣れたことと、拡張機能の品質が向上したことが要因だろう。

垂直タブという最後の課題を乗り越えた Firefox を、これからは趣味でも仕事でも愛用し続けることができそうだ。