社会で求められる人材の変化に伴って「学び直し」や「リスキリング」が俄かに話題になっている。そして、今自分もその必然性をひしひしと感じている。

C# と C++ で Windows ネイティブ アプリケーションの開発に携わって 10 年以上が経つ。しかしながら、転職活動を通して、そんな職歴は覚悟していた以上に殆ど求められていないのだと知る。特に在宅勤務が可能な中途採用の場合、その多くがウェブ アプリケーション開発関連だ。そしてその大多数が実務経験(ないしそれと同等の知識)を必要とする。要求事項に照らせば、私の市場価値は無に等しい。

言語や開発対象が変わっても、ソフトウェア開発で真に必要な技能は変わらない。理論上はこれまでの自分のソフトウェア開発経験だって無駄にはならない。そう頭では分かっていても、感覚的には自分がこれまでやってきたことなぞ無駄だったと感じてしまう。今までのことは一旦忘れ、求められていることを「学び直す」しかないのだ。

だが、この感覚は自分だけのものだろうか。これと同じことが、世の中の「学び直し」で起こっていないだろうか。特定の業種で人手が足りないからといって、ラベルを貼り替えられ、「あなたは明日からこれをやるべきだ」と言われて、素直に「はいそうですか」と納得できる人はどれぐらい居るだろう。これまで積み重ねた経歴を発展させられれば理想的だが、そんな幸運な人は恐らく少ない。全く新しい職に就いたことを、自分のこれまでの生き方を否定されたと感じる人も一定数居るだろう。単なる数合わせではなく、対象となる人々の感情に寄り添う観点にも注目していきたい。

残念ながら、今の自分には感情にかまけている時間は無い。今更ながらウェブ アプリケーション開発の手習いを始めよう。それを誰かがいつかきっと認めてくれると信じて。