『アイデアのつくり方』
自分は頭の固い人間だと思う。もともと世事に疎く、柔軟な発想をすることに苦手意識がある。他の人々が自分が思ってもみなかったようなアイデアを話すのを聞いては、どうすればこのように柔軟な発想ができるのだろうと考えていた。
何処かで紹介されていた『アイデアのつくり方』(ジェームス・W・ヤング著、今井茂雄訳、竹内均解説)を読みたいリストに入れていたのは、そんな自分の劣等感だったのかもしれない。
この本を見付けてまず最初に驚いたのが、その薄さである。元々薄い本だと思って読んでいたら残りの3分の1ぐらいは解説で、本文は50ページ強に過ぎない。文字もぎっちり詰まっている訳ではなく、下4分の1は注釈のために空けてある。しかし、その内容は決して薄くない。要点が凝縮されていて、寧ろ濃い。
アイデアを作るには、5つの段階を経るという。様々な言葉で表現されているが、自分なりの解釈を示すと次のようになる。
- 情報収集
- 咀嚼
- 孵化
- アイデアの誕生
- 具体化
このアイデアの作り方自体はそこまで奇抜なものではない。それは、この本が最初に書かれてから80年以上が経ち、同様の手法が広く普及したからかもしれない。あるいは、1つ1つの旧知の要点を繋げて「アイデアの作り方」としてまとめたこの本こそが、実はアイデアの作り方を体現しているからかもしれない。
一方、要求されている実践の水準が高いことにも気付く。情報の収集も、単に上辺だけをなぞって理解したつもりになれば良い、というものではない。街で偶然出会ったタクシーの運転手が「一人の独自の人物に見えるようになるまで」研究しなければならないのだという。私の日々の観察は、言うなればタクシーの運転手がどんな人物だったかを覚えていれば良い方で、酷いときにはタクシーに乗ったことすら忘れている。
何かを真に理解するということの何と難しいことか。たとえば、あるソフトウェアのコードを理解したいとする。コードレビューでも何となく理解したような気になることはできる。だが、何故そう実装されているのか、抜本的に改善できるところはないか、その背後まで深く理解できるのは、大抵自分の手でそのコードを変更しようとする時だ。
自分のアイデアを広げるために、もっと広い視野を持っていたい。もっと深く物事を理解していたい。全世界と仮想的に繋がっていても、携帯端末の狭い画面をなぞるばかりではいつまでも視野は狭いままだ。
書を読もう。手を動かそう。それこそが、私の凝り固まった頭を解きほぐす特効薬に違いない。