Google Pixel 8a の外箱

Google Pixel 8a を買った。Google Pixel 5a (5G) からの乗り換えである。スマートフォンに過度な期待をしていないこともあり、今のところ何の不満も無い。ただ、立て続けに落として二度画面割れを修理する羽目になった経験に懲りて、評判が良く重厚な Spigen のタフアーマーケースに入れている。

8a に乗り換えたことで、消しゴムマジックに代表される AI 機能や、外部ディスプレイへのミラーリングが使えるようになった。だが、今回の乗り換えはこれらの新機能を試したい、という積極的な理由ではない。Google Pixel 5a (5G) のサポート期間が先月で終了してしまったことが原因だ。サポート期間が切れた情報機器を使うことは、ソフトウェア開発者としての矜持に悖る。

年々スマートフォンを買い替える時の喜びやわくわくが減ってきているように思う。自身が歳を取ったり、スマートフォンだけに時間を費せなくなったりしたことも勿論関係しているだろう。ただ、そこにはスマートフォンの性能や機能の向上率が逓減していることも大きく影響していそうだ。あの Apple ですらここ数年は新しいわくわくを生み出すことに苦労している、と言われている。

この状況は、たまたま今読んでいるダニー・ドーリング著『Slowdown 減速する素晴らしき世界』で紹介されている「スローダウン」そのものだ。この本は様々な指標を引き合いに、その種の減速は不可避であるし、それを否定的に捉える必要も無い、と説く。

生成系 AI の進化が人々を驚かせる日々が続き、何となく今も加速度的に目まぐるしく技術革新が進んでいる印象がある。しかし、よくよく考えてみると、それらですら計算機の登場による衝撃は越えられない。もっと遡って電気の発明と比べれば、その影響は更に小さくなる。そして、それらの衝撃によって引き起こされた加速度的な成長は寧ろ例外であることを、この本は示している。

iPhone が登場して 20 年近く(もうそんなに!)。人々が携帯端末でやりたいと思うことは無限ではないし、そもそも作る資源も使う人も有限である。その進化の速度が遅くなるのも必然だ。

スマートフォンの進化にわくわくできなくなった。それは取りも直さず、スマートフォンでやりたいことは大抵できるようになった、という「素晴らしき世界」の裏返しなのだ。その事実を肯定的に受け止めて、この新しい端末とじっくり付き合うことにしよう。幸いにしてこの端末は最大 7 年間も使い続けることができるのだから。